愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

大恋愛物への感動と『舞音』への期待と ◆ 花組『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』

 

Musical『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』
花組宝塚大劇場 2013年8月16日~9月23日/東京宝塚劇場 10月11日~11月17日
脚本・演出/植田景子
主演/蘭寿とむ・蘭乃はな
 

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『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』CS放送観ました。

これ本当は生で観れるはずだったのが、チケット手配のミスがあってチケットカウンター行ったら1枚足りずに発券されて、泣く泣く私が身を引いたという経緯があり。
なので今回のCS放送が初見です。
 
これは同タイトルのオペラがベースになっているんですね。
なれど芸術に全く造詣の深くないワタクシ、このオペラもアンドレア・シェニエの史実もわからないまま観て感じたままを書きます。
 
まず。
 
面白かったです。
CSで舞台放送観てると最初の10分で自分的におもしろいかどうか判断できるんだけど、これは面白い。時代背景、主要キャストの役どころの見せ方も不自然さがなくすっと頭に入ってくる。
どこぞのU爺のように「(ジャジャーーン)おお!これはこれはナントカ国のナニナニ、ダレソレのご子息、ナンタラナニエモンさんではないですかあああ」みたいな違和感ありまくりの役紹介もなく、かと思えばシャーーーーッとカーテン引いてこれから始まる舞台の時代背景を長セリフで淡々と説明し始めたりしない。特にU爺に恨みはありません。念のため。
 
初老のパンジュ侯爵(望海)が一編の詩から過去を回想するところから物語は始まる。
伯爵家の夜会。ちょっと高飛車で美しい伯爵令嬢マッダレーナ(蘭乃)とそんな美しい令嬢に淡い恋心を抱いている使用人カルロ(明日海)。その夜会に招かれた詩人アンドレア(蘭寿)。
華やかな夜会の場で「私のために愛の詩をつくりなさい」と高飛車に言うマッダレーナに「あなたは本当の愛を知らない」とはねつけるアンドレア。
そこに平民たちが食糧を求めてなだれ込む。そして「市民が蜂起した。バスティーユが陥落した。」と興奮して叫ぶ平民。日頃ルソーを敬して止まないカルロは自由と平等を手に入れるために立ち上がる。
 
ここまでで約10分。15分くらいあったかな。まあそこはファジイに。
 
ベルばらもしくは1789直後のフランス。スカピンと同じくらいの時代ですよね。
まあ『愛と革命の詩』っていうだけあって主演ふたりの愛が押し出されてはいるけどその背景にある革命後の騒乱、ジャコバン派の恐怖政治も上手く描かれていてそこは景子先生の腕か。
 
舞台装置も舞台全体を覆うかのような大きな天使の羽が印象的。転換もカーテンの使い方もスムーズだしライトの使い方も独特。そして美しい主題歌と美しい踊り。大石裕香さんの振付場面なのか、真っ白い衣装で踊るふたりの場面がとっても優雅で印象的でした。
 
ただ。
ロミジュリで言うところの愛と死的な役割なのか。黒天使と白天使。
景子先生の好みなんだろうけど、あれ必要だったのか?役としては描ききれない心情とかイメージの象徴として使いたかったのかも知れないしふたり(冴月・柚香)はとても美しかったけれど。
なくてもよかったと思うしもしかしたらない方がストーリー運びがよりスムーズだったかも。なんて思ったり。
 
そして下級生もちゃんと得意分野を生かして抜擢してもらっている印象。
先の黒天使白天使のダンス然り、家族を殺された嘆きを歌うユディット(朝月)、マッダレーナが身代わりになる囚人イデア(乙羽)はその歌唱が素晴らしかった。
 
これ確か蘭寿さんの「大恋愛ものをやってみたい」という要望から景子先生が書いてくれたんだよね。そして明日海さんの花組異動後の初本公演。もともとあるオペラが主軸にある中でうまく演者にアテて書かれていたと思います。景子先生なかなかやりよる。
 
アンドレア(蘭寿)。真面目で不器用な詩人感が蘭寿さんっぽい?のかな?蘭寿さんの人となりあまりわからず適当に言ってるけど。でも私の中では蘭寿さんって真面目な優等生イメージで。詩を愛しマッダレーナを愛し曲がったことが大嫌いなクソ真面目さがよく出ていました。ただ蘭寿さんはやっぱりコスチューム物よりスーツ物の方が似合いますね。つくづく。そしてお歌がやっぱり少し、すこーしだけ、難あり。だったかな。
 
マッダレーナ(蘭乃)。この人はメイクが上手。褒めてるのかけなしてるのかわからないけどメイクすると本当に美しくなる。そしてお歌。なんかこの頃がもしかして頂点だったのかな?くらいには伸び伸びと声が出ていてびっくりしました。冒頭の奢侈に興じた風の令嬢よりも革命で追われて身を隠しながらそれでもアンドレアを思いぎりぎりで生きている感じの方がうまい。し似合ってました。
 
カルロ(明日海)。ルソーを愛し自由平等を愛する熱い青年。最初はジャコバン派について恐怖政治の一端を担うもののやがてそんな捻じ曲がった政治に疑問を持ち最後には捕えられ処刑されそうになるアンドレアを助けようとする。マッダレーナへの諦めきれない思いも抱えながら。そんな微妙に揺れる、内に陰に秘める感情を演じさせると絶品ですね明日海さんは。
 
パンジュ(望海)は今の雪組でのトリデンテっぷりが安定しているからか、出番が薄い印象。まあこのときはもちろん二番手どころかはっきり番手ついてないくらいだから仕方ないか。でも回想場面の若かりしパンジュより冒頭の初老の姿の方が似合ってた?望海さんの貫禄。凄い。
 
そして目立っていたのはアンドレアの弟マリー=ジョセフ(華形)とジャコバン党員ジュール・モラン(春風)。兄の不器用な生き方とは真逆に世渡りの上手い弟、時に不器用な兄を理解できずイライラしながらも最後にはやはり兄を思う弟に。そして揺れるカルロとは正反対に死の粛清を厭わないジャコバン党員ジュール。最後まで真っ黒な役でだからこそ本当にかっこよかったです。ちょっとスカピンのショーヴランっぽい感じでした。
 
最後ね。泣いた。「あなたと生きるために死ぬのです」だっけ?マッダレーナの台詞。愛のためには死をも厭わない。愛する人とともに死することが幸せ。すごいわ。これぞ究極の大恋愛物。泣いた。
 
 
なんか『舞音』期待できそうな予感。景子先生お願いね。みやちゃんの役どころがここでいう黒白天使っぽくならないようにちゃんと役として確立させてくださいね。あとは大石先生の振付はまさきさんよりも精霊たちに踊っていただいた方が、もしくはもう一人のシャルル・みやちゃんがマノンちゃぴと踊ってもいいかも。いや、とにもかくにも楽しみにしてます、景子先生。