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愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

ビジュアルコンビの魅力を最大限に ◆ '08宙組『Paradise Prince』

COSMOS 舞台雑感

 

Musical entertainmentParadise Prince
宙組宝塚大劇場 2008年9月26日~11月3日/東京宝塚劇場 11月21日~12月27日
作・演出/植田景子
作曲・編曲/甲斐正人
装置/大橋泰弘 衣装/有村淳
 

『Paradise Prince(パラダイス プリンス)』『ダンシング・フォー・ユー』 | 宙組 | 宝塚大劇場 | 宝塚歌劇 | 公式HP

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なんか景子先生の作品観てみようかなーと思って。最近CSで放送されたものを視聴。

 

なんかもう、いろいろとすごい。これタニウメにしかできない。言ってみれば超アテ書き。もう劇団も景子先生も開き直って「うちのタニウメは歌えませんが何か?そんなもん二の次でとにかくビジュアル推しで行きますけど文句あります?」的な。いやあ劇団と演出家がそう言うだけあって(言ってません)もう耳を使うヒマがないほど視覚に訴えてくる。まあこのポスターからして、ねえ。宝塚のポスター色全くない。でもポスターの役目としてはいいんじゃない?すっごい興味をそそられるしなんか楽しそう、このふたり美しい。ちょっとこれ観てみたい。ポスターの本来の役割。アメリカンでキュートでポップでハッピー的な。そしてそれが見事ハマってしまうタニウメとは。

 

景子先生ってこんな作品も作ってたんですねー、な印象。いい意味で。景子先生の作品は掴みがうまいという印象があるんだけど、この作品も冒頭で惹きこまれました。本でも映画でも舞台でもそうだけど冒頭でどれだけその世界に入り込めるかだけでその先への読む(観る)意欲が変わるってもんです。その点景子先生は作品の全体的な質に関してはモノ申したいところはありますが、掴みはほぼほぼOKです。よく言われる娘役の扱いについても今回はスチュアートの妹マギー役の花影アリスさん、アニメーション会社の同僚アンジェラ役の和音美桜さんはうまく使われていてよかったんじゃないかな。和音さんは前作休演した陽月さんの代役でヒロイン演ってたからそれから比べちゃうとどうしても、なんだろうかそれとも。

 

アート界のプリンス、お坊ちゃまのスチュアート(大和悠河)がアニメーション作家になる夢を捨てきれず家を出て自転車でアメリカ大陸を横断。とあるアニメーション会社に身分を偽って就職し、アルバイトのキャサリン陽月華)との恋や新入りのラルフ(北翔海莉)との友情、その裏であの手この手でスチュアートをアート界に取り戻そうと画策するアンソニー(蘭寿とむ)に恋も夢も阻まれようとする中で最後には自分の夢を実現させていく、みたいな話。

 

ここに出てくるスチュアートが書いたというアニメーションキャラクター「Paradise Prince」は一般公募でふわこういちろう氏という方のデザインが採用されたとか。この頃は宝塚とは全く縁遠い生活してたからなー。全然知らなかった。でも。あの感じでホントに良かったのだろうか。手書きアニメの良さを伝えたかったんだろうけど言ってしまえば幼稚園児の書いた王子様みたいな絵で。アニメーション会社がプロとして作るアニメーションがあんなパラパラ漫画に毛が生えたくらいなものでいいのかなーと始終ツッコまずにはいられなかった。私芸術に疎いからわかる人にはわかるのかなー。

 

全般的にすっごくベタなお話。お坊ちゃま育ちで金に困ったことのない主人公が夢を叶えるために貧乏暮らしを強いられたり、画家を目指すヒロインが挫折しつつも結局はその夢を実現させたり。二次元的な悪役が出てきたり。仲間だと思っていた奴が実は裏の顔を持っていたり。アメリカのファミリー向けハートウォーミングコメディドラマにありそう。アテレコで観客の笑い声が入りそうなやつ。「夢は諦めなければいつか必ず叶う」「ヒーローは必ず勝つ」系のなんなら小中学生向けの舞台と言ってもいいくらい。いやでもこれ、否定的に言っているのではなくてこういう行間を読まなくていい、目に入るものをそのまま理解していけばいい、ただ観ているだけで楽しいっていう舞台、逆になかなかないので新鮮だしすっごく面白かったです。

 

スチュアート(大和悠河)。ほんとこの人のビジュアルの完璧さたるや。なんと登場は自転車に乗って。パーカーにバッグを斜め掛けして颯爽と現れる。誰?誰なのこのリアル王子様はいったい。おとぎの国か二次元アイドル界から降臨されたのかくらいのきらっきらアイドル王子様。ここまでのビジュアルを持っていてあの歌唱力(失礼)だったらもう景子先生じゃなくっても歌は捨てるわ。“歌”劇団のトップスターだけど。キャサリン(陽月)との場面でハート型のピンクライトに照らされる場面があるんだけどあそこまでピンクライトが生々しくなく爽やかに生える人いない。現代アメリカのお坊ちゃまでまっすぐに夢に向かう青年っていう設定がすごくハマってて、芝居もよかった。のにやっぱり歌が始まると現実に戻される感否めないのが残念...もう歌わせなくて良かったのでは。ラスト、すっごい感動的なシーンでタニウメがデュエット歌い出した時はどうしようかと思ったわ...

 

キャサリン陽月華)。足首骨折して休演からの復帰作。こちらもビジュアル推し納得のヒロイン。顔はちっちゃいし細いし可愛い。そしてこちらも漏れなく歌えない。なんならタニさんより歌えてない。よくもまあここまで言ってしまえばお似合いの二人をコンビにしたもんだと劇団の勇気に拍手を送りたい。相性悪い言われてたみたいだけどビジュアルだけなら最高のコンビ。その分二重唱が始まると本当に耳を塞ぎたくなるという副作用があるけど。でもこのビジュアルで「私不器用だから正直にしか生きられなくて」的な台詞を吐いた時にはこいつ同性から嫌われるタイプだなと確信(褒めてます)。

 

アンソニー(蘭寿とむ)。アニメに出てくる系コテコテの悪役。ビジュアル的にも。黒髪を無造作にオールバックして長いシケを一本。めっちゃ悪そうに演じながらもどこか滑稽な感じが絶妙。美味しい二番手役。悪は悪だけど救いようのない悪ではない、なんならちょっと母性本能くすぐられもする系の悪。トップ時の蘭寿さんよりこの頃の方がイケメンだし歌も上手い気がするんだけど???どういうこと???てか薔薇持って銀橋渡られた日には...コテコテ過ぎて腹筋に来たわ思わず。手下?のシャルル(悠未ひろ)とのゲイなキスシーンもあり。美味しい。

 

ラルフ(北翔海莉)。アニメヲタクでスチュアートたちのアニメーション会社に入ってくる新人。でも実はその正体は大富豪の美術収集家の息子でエンディングで美味しいところを持っていきます。北翔さんこの頃からアドリブ凄かったんですね...。私が観たのが千秋楽映像だからかもしれないけど飛ばす飛ばす。ストーリーの本筋から離れなければアドリブ飛ばすのもいいと思うしお前が言うかってのもあるとは思うんだけど。

 

専科からは一樹千尋さんと美穂圭子さんがご出演。

もう歯に衣着せずに言っちゃうけどトップコンビのジャイアン歌唱を聴いた後でこの方たちの歌唱を聴くとすっごい耳が修正されるというか、これだよこれ感。美穂姐さんは『伯爵令嬢』でも素晴らしい歌唱を聴かせてくれたけどあれだね、歌えないトップさんの舞台で観客の耳を正す役割をしてるんだねきっと。全般的に明るく楽しく面白く話が進んでいく中で美穂さんの場面には涙を誘われました。ヒロさんも演技は少々クドくてあまり得意ではないのですが歌唱は素晴らしい。お二人とも専科としての役割きっちり果たしていて。流石。

 

他にも若手のちぎちゃんやカチャがいたり、月担としてはあずちゃん(琴音和葉)のお姉ちゃん(和音美桜)がいたり、まいまい(萌花ゆりあ)の妹ちゃん(萌野りりあ)がいたりでいろいろ楽しめました。

 

Musical Entertainmentと銘打ってるだけに本当にエンタテインメント性抜群の作品。ディズニーランドでミッキープレートを食べながら観たい感じ。ストーリー運びに破綻もないし笑いの中に感動ポイントもあってとてもいい作品でした。

 

景子先生は細部を虫眼鏡で見て細かく補正していくような繊細なモノ作りよりもこういう俯瞰したイメージでリアルなモノをエイヤで作ってくれた方がいい作品になるんじゃなかろうか。とか思ったり。しました。