愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

ダブルヒロインの上手な使い方 ◆ '14雪組『パルムの僧院』

 

バウ・ミュージカル・ロマネスクパルムの僧院-美しき愛の囚人-
雪組バウホール 2014年10月24日~11月3日
脚本・演出/野口幸作
主演/彩風咲奈・大湖せしる・星乃あんり
 

 

『パルムの僧院』観ました。

スタンダールが口述筆記でわずか52日間で書き上げたという作品。

 

スタンダールと言えばほかに『赤と黒』が浮かびますが(というかそれしか知りませんしどちらも宝塚の作品としてしか知らない浅学ですすみません)まあどちらも若い主人公に熟女と若い女の最近の流行り言葉で言えばトリデンテですよ。ダブルヒロイン。こんなの別箱かおうきかなめさん時代の宙でしかできませんね。はい、皮肉です。

 

主人公・ファブリスと彼を愛する叔母のジーナ。ふたりの関係に嫉妬したジーナの婚約者?モスカ伯爵に嵌められ正当防衛の罪で投獄されるファブリスはジーナに思いを寄せるパルム大公の陰謀で毒殺されそうになる。

ファブリスが初めて本当の恋をする牢番の娘クレリア、ジーナ、改心したモスカ伯爵とファブリスの友人フェランテで「ファブリス脱獄計画」を立て実行し成功するも逃亡先でクレリアに会えないファブリスはパルムに帰ってきてしまい結局捕まり死刑囚に。

結果革命により一命をとりとめたファブリスは司教職となり3年後に再会したクレリアにフラれそのショックでファブリスはパルムの僧院にこもった挙句死んでしまう。っていう話。

 

野口先生、キキちゃん主演の『フォーエバー・ガーシュイン』から続く2作目?なのかな?ちょっと演出手法がクラシカルな感じででも決して嫌いではないです。ちょっとだけ植爺的要素が見え隠れするし演出が平坦で抑揚がもうちょっと欲しいなーとは思うものの演出に破綻はないしバウの小さい箱を上手く使っているように思いました。野口先生はショー作家になるのかな?次作は星組さんのショーで大劇場デビューだよね。大劇場のお芝居も観てみたいのになー。

 

ファブリス(彩風咲奈)。真ん中似合いますねーさきちゃん。まず大きい。男役としてパッと目に入る大きさって重要。それだけで一芸助けるってもんです。若々しい美青年的な雰囲気は出ていたものの本当の愛を知らない青年のちょっとした影があまり見えなかったかな。後半、司教職の風貌はちょっと残念だったかも。初めてクレリアを愛しその愛に没頭していく感じはとてもうまかった。

 

ジーナ(大湖せしる)。この人はこういう役を演るために女役に転向したのかと思うほどのハマり役。中の人の絶対的美貌がさらに輪をかけていて。でも逆に言えばこういう役しかできないのかなーという印象もあって。惜しい。言い方悪いけど年増女が若い男に縋る感じがちょっと痛々しくてだから上手かった。

 

クレリア(星乃あんり)。この人は鬘が上手いなーという印象。『ラ』も個性的な鬘が絶妙に似合ってた。せしこが黒ならあんりは白。こういう純白な役ほんとに似合ってます。天使。でもファブリスは彼女の一体どこにこんなにも惚れ込んだんだろ。ジーナに毒された身体に若くて無垢な女が沁みたのかなー。クレリアからファブリスもだけどお互いいつ、どこに、そんなに惚れ込んだんだよーわからないよーという印象。演出が悪いんかなー。

 

フェランテ(月城かなと)。モスカ伯爵(香綾しずる)とどっちが二番手役?ヒロインもダブルなら二番手もダブルな印象。出番は要所要所しかないけどファブリスの友人として友を助け最後には革命に身を賭して死んでいく要の役。あご髭...あまり似合ってなかったなー。顔が綺麗過ぎるのかな。

 

モスカ伯爵(香綾しずる)。最初は嫉妬からファブリスを陥れようとするも後に改心してファブリスを助けようとする。その裏にある一貫したジーナへの愛が切ないし応援したくなる。最後はやっと思いが遂げられてほんとうに良かった。肩たたいてあげたい。

 

他にもパルム大公の手下を演った帆風成海さんはすっごく美味しい役だったし旅芸人の桃花ひなちゃんにおかれましてはあの可愛らしいお顔でムチを振るう場面を惜しげもなく見せていただきましてついついそこは巻き戻してリピしてしまいましたしドスの効いた歌声良かったです。

でもって我らがひとこ。クレリアに惚れる若い公爵を好演。すっごい素直に真っ直ぐに何も困ることなく生きてきたことが伺い知れる無防備な優しさと少しのバカさが出ていて良かったです。ファブリスに惚れているクレリアに「身を引きます(キリッ)(キマった..)」な感じで言い放つものの「あなたの妻になります」クレリアに言われた途端「ほんとですか!!?!」とかめっちゃ喜んでて。そこに愛はないことくらいわかってるだろうに。ほんとひとこ可愛い(ひとこじゃなくて役です)。

 

残念なのはメインキャストのお歌があまり聞き惚れる感じではなかったこと。やっぱりメインの方たちは一定の歌唱力を持っていて欲しいです。

そして良かったのは役が多い。バウで若手メンバーが多い中男役も娘役もいろんな役をつけられていてこれくらいの役付きを本公演でも観たいわーくらいには。

 

これ、「情熱のバルセロナ」というタイトルで舞台をスペインに移して柴田先生が書いてるやつです。 大地真央さん黒木瞳さん主演で。そっちも観てみたいなー。水さんで再演したやつは確か焼いてあるはず。今度はそっち観てみます。