愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

『ラスト・タイクーン』と似て非なる良作 ◆ '97・花『失われた楽園』

ミュージカル『失われた楽園-ハリウッド・バビロン-』
宝塚大劇場 1997年2月14日~3月24日東京宝塚劇場 1997年6月4日~6月30日
作・演出/小池修一郎

 

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オールバックでちょい黒塗りでちょい悪なミキさんちょうかっこよくないですか。真矢みき(こっちの方がいまだにしっくり)さんには『エデンの東』で危うく沼に引きずり込まれかけたのでその後は非常線張ってトートに誘われる闇広ルドルフばりに全力で抵抗しました。そんな矢先諸事情で海外生活をすることになって宝塚からは物理的に離される状況になりまあいわば断絶療法?みたいなもんでなんとか沼に嵌らずに済んだのでほんと結果ありがとう海外生活(なんの話)。

フィッツジェラルドといえば小池先生。大変相性が良いです。これ特に公式には記載がないけどフィッツジェラルド「ラストタイクーン」がベースだよねどう見ても。プログラムにはその辺記載があるのかなー。「華麗なるギャツビー」の舞台化('92雪)に引き続いてたいへん良きフィッツジェラルド作品です(決めつけ)。

昨今は海外ミュージカルの潤色演出がメインになっている小池御大も当時は宝塚歌劇団の座付演出家として頭角を現し始めたところで原作ものが多かったもののご自身で当て書きされる作品はどれも佳作でした。あー......でも『JFK』はいまいちだったな...わたし的には...(ぼそ)。

 

ハリウッドの映画プロデューサーの栄光と挫折と死。椿姫のカメラテスト場面があったり最後は罪をかぶって銃で撃たれたりなんとなーく『ヴァレンチノ』と『華麗なるギャツビー』がブレンドされているような既視感はあったけど、“映画プロデューサーと新進女優の恋”っていう主軸がぶれずにあって、それを取り巻く夢、野望、憎しみ、etcが出すぎず引きすぎずのいい塩梅でストーリーに肉付けされてるのほんと観ていて心地いいです。展開も明暗、動静、緩急ちゃんとメリハリがあって観ていて飽きないし。そしてやっぱり宝塚らしく死してもちゃんとラストに最高に輝く姿で蘇らせてくれるのは小池先生ならでは。間違っても柴田先生みたいに死んだまま幕を降ろしたりしません(柴田先生だいすきです)。幕開きも小池先生らしく冒頭は花道から主要キャスト少数名がストーリーへの導入的台詞を語りながら登場、その後すぐに本舞台の幕があがり華やかな大勢口の場面に切り替わるっていう展開。ここから始まるストーリーにうまい具合に引き込んでくれるのとても良いです。

 

その横暴ぶりに“タイクーン”と呼ばれる主人公アーサーと今は亡き婚約者ニーナ。そのニーナに演らせたかった「青春の凱歌」。その作家をシナリオライターとして雇い入れ、ニーナに生き写しの新進女優リアをヒロインに迎える中でリアにニーナの面影を重ねてやがて愛していくアーサー。アーサーに反発する所長とグルになってアーサーを陥れようと画策するプロデューサー、過酷な労働に耐えかねてユニオン結成に団結する労働者たち、アーサーの栄光と挫折、リアの隠された秘密、すべてが絡み合ってすべてが結果良い方向に向かいつつあって。からのラスト。うん、小池先生のこういう展開演出やっぱり好きです。

 

リアを演じたトップ娘の千ほさちさんはじゅんちゃん(純名里沙)の後を継いでこれがお披露目。作家のエリオットには二番手のタモちゃん(愛華みれ)。三番手は過酷な労働を強いられるシナリオライターで最後は薬物中毒による精神錯乱でアーサーを撃ってしまうレスリーを演じたタータン(香寿たつき)。そして悪役プロデューサにはみゆさん(海峡ひろき)とレスリーを気にかけているコラムニストには別格娘的立ち位置のゆかりちゃん(美月亜優)。みゆさんとゆかりちゃんはこれが退団公演。売り手女優のポーラには渚あきちゃん、売り手俳優マリオにはチャーリー(匠ひびき)、契約切れで解雇されるライターのピーターにはまだ若手のオサさん(春野寿美礼)。オサさんは本作新公主演ですね。

しかし、じゅんちゃんは前作で退団したものの、タータン、みゆさん、ゆかりちゃん、あきちゃんって主要キャストにここまでいるといったいどこの雪組?ってなりますな。みんなカリさん時代は雪の若手かつ主要メンバーだったなあ...(とおい目)。

 

 

ところでこの作品。蘭寿とむさんの退団公演『ラスト・タイクーン』です。生田先生の大劇場デビュー作。ウエクミの時も思ったけどバウで慣らしてそれなりに好評を博した演出家に初めて大劇場やらせるとこう、今まで2時間超の尺にいろんなエッセンス詰め込んでそれなりに上手くまとめていたものがいきなり90分という短い尺渡されてでもなんとか詰め込もうとぎゅうぎゅう押し込んだら反発で全部溢れちゃった、みたいな残念感がありました。とにかく生田くんの『ラスト・タイクーン』はかなりとっ散らかってたし最後は無理やり締めにいってた感じだったもんなー。サイドストーリーに肉つけまくりだから主軸がぶれぶれだったし最後は蘭寿さん事故?だったかでいきなり死んじゃって終わってたよね...。

でもまあそのあとの『Shakespeare』はとても良かったから失敗は成功の母、だね生田くん(誰)