愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

まなきさんが神懸り的にすごかった八王子の夜 ◆ '17・月組『鳳凰伝』

『暁のローマ』が始まったのかと思った...焦った...くらいにはさすがキムシンこういう演出ブレないなーと思いながらの幕開きだったんだけどどうやら初演にはあったカラフの隆盛期を描いた冒頭シーンがカットされた代わりのタンとトンの緞帳漫才だったらしいってことは理解した。わたしちょうどタカハナ時代は宝塚から遠のいていた時期だったので初演観てないんですよねー。自宅に山積みになっているスカステ映像漁ったけど焼いてもいなかったので今回はまったくの初見でした。

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トゥーランドット」は18世紀の劇作家カルロ・ゴッツィ作の寓話劇であり、宝塚歌劇においては白井鐵造が1934年に作品化、1952年には春日野八千代による再演で話題を呼びました。2002年には、和央ようか花總まりを中心とした宙組が21世紀版と銘打ち『鳳凰伝』—カラフとトゥーランドット—を上演。脚本・演出を担当した木村信司が、第12回社団法人日本演劇協会賞を受賞するなど、好評を博しました。それから15年の時を経て、珠城りょうと愛希れいかを中心とした月組全国ツアーメンバーが、高らかに愛の力を謳いあげる、壮麗でドラマティックな物語に挑みます。

 

義に篤く一本気なヒーローはたまきには合ってたし冷血非道で絶対的な美を持つトゥーランドットは今のちゃぴには適役にも思えて、そういう意味では今の月組にふさわしい舞台でした。ただきっと初演コンビはもっとニンに合ってたんだろうなーとは思う。想像だけど。

謎解きにチャレンジして敗れたペルシャ王子が首刎ねの装具を付けて要所要所に出てくるのすっごい不気味だったしそれよりもまゆみさんとぎりぎりがあれ北京の高官?役人?だかでこの二人だけ不気味メイクしてるのがさらに背筋をもぞもぞしに来るやつだったんだけどオペラ版もこんな感じなのかなー?このふたりが荒んだ北京の国情を視覚的に物語っているかのようにも思えました。

まあ復讐だなんだかんだと言ってはいるけど結局トゥーランドットは男嫌いのフェミニストってことだよな...でも性別:♂(オス)に対して嫌悪感を持ちながら同時に自身が女性であることへの劣等感を否定するかのように求婚する男たちの首をバッサバッサと切り落としていく感じは冷酷非道にも見えながら一方で哀れな女にも見えたし、カラフが三つの謎を解いた時に目の前の男の腕に抱かれる現実を突きつけられて「嫌!」と慟哭する姿は地団駄踏んで拒否する子どもみたいにも見えて、そんなところにトゥーランドットの人間味を感じたりもしました。まゆぽん演じる皇帝がこの人がきちんと国を治めていればこんな荒んだ国にはならなかっただろうと思わされるくらいには常識人で情のある人に見えてでも娘の言ってしまえばただのわがままを苛めることをせずに許容してきたからこそのこの惨状だと思うとつくづく父親の娘に対する甘さってのは国が違えど時代が違えど砂糖菓子にチョコレートぶっかけて生クリーム漬けにしたくらいにはでっろでろなんだな...と思う...(身近な人間を思い浮かべながら)

しっかし『All for One』もそうだったけど、この作品も言ってしまえばちゃぴが主役だろ?と思わされる舞台だった...衣装が豪華絢爛ってのもあるけど、ちゃぴが舞台に登場した時の圧倒的な存在感と真ん中感たるや、カラフの存在が掠れるくらいには凄まじいやつだった...ちゃぴはいったいどこへ向かっているのだろうか...(震)

ラストの「その名は...愛!」ってところ、ここは歌じゃなくてトゥーランドットには威厳のある、そして確信した表情と声音で台詞として言って欲しかったなーと思いながらのキャスト語り。

 

アデルマ(麗泉里)

せんりちゃん大抜擢だねー。初演ではふづき美世さん、続く博多座では彩乃かなみさんっていう、どちらも後のトップ娘役が演った役だもんねー、すごい!前半と後半でキャラが180度変わるので確かに難しそうな役だけど、後半のカラフにフラれて逆切れしちゃう感じはちょっと役作り薄かったような。せんりちゃんの人の好さが漏れ出ちゃってたのかもしれないし、ムチ打ちもその前のぎりぎりが上手かっただけに()ちょっとヘタレに見えてしまった...でもお歌はさすがのせんりちゃん、安定してました。かわいかった!

 

タマル(海乃美月)

うみちゃん良かったーーー!!!一度掟を破ってカラフの顔を見てしまったことへの償いに命がけでカラフの父であるティムール王を守りにいくうみちゃんかっこよかったし、カラフへの恋心を抱きながらもそれをおくびにも出さず顔を上げよと何度となく言われても決して顔をあげなかったタマルがカラフの腕に抱かれた死の淵でやっと目を上げた時にはもう視界が闇でなにも見えないってのがむっちゃ切ないやつだった。我が身の死をもってトゥーランドットに愛を説く、でもきっとそれはカラフのためでもトゥーランドットのためでもなくて、奴隷であるタマルにとってのカラフに愛を伝える唯一の手段だったんだろうなーと思うと、タマルにとっては愛する人の腕に抱かれて愛を伝えられた、とっても幸せな死だったのだと思いました。清い死。タマルには泣かされました。

 

バラク(月城かなと)

初演の水中でのシーンが一番の見せどころだと思うんだけど全ツではさすがに無理だもんね...それもあってかちょっと二番手としては比重が小さかったような気がした。中盤で死んでからは出番なかったし。元王子という型書きの盗賊の長で人望厚い人っていう設定なんだけどじゃあなんで盗賊なんてやってるの...っていう疑問は横に置いておくとして、カラフに惚れ込み命を懸ける気概とカラフからも名を告げられるくらいに信頼される感じはすっごい出てたしなによりさすがのれいこ様、すっごいイケだった...でも黒づくめの衣装だっただけにちょっとだけ、壁に執着のないベルナルドにも見えた...ってのはここだけの話です。

 

トゥーランドット(愛希れいか)

いやあ、すごいですまなきさん。あの(どのだよ)龍真咲さんの相手役をしていたとは思えないくらいのスケール感をひしひしと感じました。男嫌いで冷酷な美女を時に威厳に満ち、時にヒステリックに演じていてさすが過ぎたし三つ目の謎になかなか答えられないカラフを前にした高笑いはあれゾッとするやつだった...それと夢の中でカラフに悶える例の場面、まさかちゃぴがこんなに色っぽい場面をちゃんと色っぽくできるようになるなんてあのころは思ってなかったし、逆にあまりにもなまめかしくてすみコー大丈夫?くらいにはこっちがあたふたしたわ...まあ最後、愛に目覚めた瞬間に今までの自分のアイデンティティをかなぐり捨てて急に「お仕えします」的なセリフを言いだすのはちょっと突拍子過ぎたし今まで無惨に殺してきた異国の王子たちのことはすっかり忘れたかのようにカラフと抱き合ってるのはなんだかなーとは思ったけどこれからしっかりと彼らに償ってくださるとのこと、どうぞよろしくお願いします(誰)。歌はやっぱり高音がちょっときつそうだったけどでもちゃぴ比ですっごいがんばってたと思う。

 

カラフ(珠城りょう)

ちゃぴがあんな豪華絢爛な衣装をとっかえひっかえしているのにたまきは夢の中のカラフを除けばずっと同じ衣装?違う?くらいには変わり映えしない衣装だったのはちょっとかわいそうだったけどでも「凛々しき美丈夫」感満載でとっても良かった。ただアデルマに対する扱いはあれ不器用を通り越してちょっと思いやりがなさ過ぎだしあれじゃアデルマだってかわいさ余って憎さ百倍にもなるわ...くらいには酷かったんだけどまあそれは脚本が悪いのであってたまきは悪くない。とは言えカラフも女慣れしてないんだろうなーだから目の前の美女相手に躍起になるんだろうなーとは思ったしでもだいたいビジュアルだけで女選んじゃって良いの?中身は殺人鬼だよ???くらいには女を見る目を疑いもした。でも反面人情には篤くて父王やタマルへかけた情はとっても深かったしバラクに見せた友情はほんとうに厚くて人間的にはとってもいいやつ、ってのが中の人がにじみ出ているようで良かったと思います。

 

*****

トゥーランドットと言えば、龍真咲さんのディナーショー『Hot Fairy!!』でまさきさんが歌った「誰も寝てはならぬ」。これはカラフから逆に謎をかけられたトゥーランドットが北京の民に「その謎が解けるまで誰も寝てはならぬ」という場面での歌なんだと今になって知りました。あのころのまさきさんはあの歌ちゃんと歌いこなせてなかったけど今のまさきさんが歌ったらどんな感じなんだろー?今のまさきさんで聴いてみたいなーというまさき脳で着地する、まあルーチンですこれあしからず。

 

 

公演CHECK

グランド・ロマンス鳳凰伝』

月組公演『鳳凰伝』『CRYSTAL TAKARAZUKA-イメージの結晶-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

全国ツアー 2017年11月17日~12月10日

脚本・演出:木村信司 / 作曲・編曲:甲斐正人 / 主演:珠城りょう・愛希れいか

 

 

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