愛あればこそ

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宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

貴志祐介「ミステリークロック」

防犯探偵・榎本径が密室の謎を解き明かすシリーズもの最新作。

 

ミステリークロック

ミステリークロック

 

 

 犯人を白日のもとにさらすために――防犯探偵・榎本と犯人たちとの頭脳戦。 様々な種類の時計が時を刻む晩餐会。主催者の女流作家の怪死は、「完璧な事故」で終わるはずだった。そう、居あわせた榎本径が、異議をとなえなければ……。

 表題作ほか、斜め上を行くトリックに彩られた4つの事件。

 

1.ゆるやかな自殺

 これはドラマかなにかで見た...ような記憶がある。若頭を自殺に見せかけて殺し、その場を立ち去るところを舎弟に見られてしまい、今度はその舎弟を自殺にみせかけて密室内で殺す。どんなに危険なものでも一度安全であることを確認してしまうと再度それを使うときには改めて安全確認はしないっていう、あたりまえなようで危険極まりない、そんな人間の習性を利用した密室殺人でした。罪を暴かれた犯人がその場で射殺されてしまうっていう、ヤクザ社会においては当然のオトシマエであることも、それをわかっていながら見過ごしてしまう榎本がちょっと怖かった...

 

2.鏡の国の殺人

 美術館に作られた芸術作品としての巨大迷路を使っての殺人。「鏡の国のアリス」と「不思議の国のアリス」って違ったんだね...ってこれを読んで知ったっていう無知。光の屈折とかカメラレンズの凹凸とか、いろんな知識を駆使してトリックを暴いていくのはさすがでした。美術館の見取り図が図解で示されていたのはわかりやすくて良かったけどそもそもトリックは美術館の構造というよりも迷路内での光やカメラや目の錯覚を駆使したものだったので、そちらをもう少しわかりやすく示して欲しかったような。

 

3.ミステリークロック

 時計を使って時間を捻じ曲げる複雑怪奇で難解なトリックがまったくもってついていけないやつでした...でもこれちゃんと理解したらすっごい背筋がぞくぞくするやつだと思うのでぜひともドラマ化してください。個人的にはスマホを取り上げる口実のためだけに館に招待された全く売れない作家ヒキジィが要所要所でナイスツッコミをしているのがツボでした。

 

4.コロッサスの鉤爪

 恋人を殺された復讐で海上の密室殺人をやり遂げる男の話。海底の気圧とかサメとかイカとか三千万もするモビルスーツとか、これまたいろんなアイテム使ってすっごい難解なトリック詰め込んだ感満載なんだけど、死んだ女の愛犬を死後とは言えサメ釣りのエサにしているその布袋の残忍さが女を殺したと確信した理由だった、っていう蓬莱が結局はそんな布袋と変わらない残忍さで布袋を殺してしまうのが皮肉だったんだけどすべての罪を認めてなお平静を保っている蓬莱のメンタルはちょっとヤバいやつですよね...

 

 

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これ、『鍵のかかった部屋』で大野くんが演じた榎本径なのね?と気づいたのは読了後でした...

 

評価:★★★☆☆