愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

CG紛いのリアルヒーロー ◆ '17・花組『MY HERO』

アクションステージ『MY HERO』

TBS赤坂ACTシアター 2017年3月16日~3月23日梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 2017年4月2日~4月10日
作・演出/齋藤吉正
主演/芹香斗亜

 

花組公演 『MY HERO』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

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宝塚歌劇というものを『ベルサイユのばら』に代表される古き床しききらびやかな世界感に重ねている人にとってはカルチャーショックが大きいかもしれません。ぶっちゃけ私も柴田作品のような色気のある宝塚作品が好きだったりはするので(宝塚これでいいのか...)と思う節は正直ありました。ほんの一幕冒頭までは...

いやあ、危うくわたし老害になるところでした。散切り頭は叩いてみるもんですね。なんというか宝塚の文明開化を目の当たりにした気分です。とは言えやっぱりどうしても本公演にはそぐわない感は拭えないものの、別箱で好き勝手()やってここまでぶっ飛んじゃってても最後にはちゃんと宝塚作品としてきれいに収めにくるところが齋藤吉正先生の奇才である所以なのでしょうか。

正義は必ず勝つ!シャキーーン!決めポーズ☆的な一見単純明快なストーリーの中に多様な伏線を練りこんできて後半にはそれをきれいに回収しにかかる感じはテンポの良さも相まってとても痛快でした。

舞台は20世紀末のロサンゼルス。伝説的な特撮ドラマのヒーロー「MASK☆J」のスーツアクターとして活躍した父の背中を見て芸能界を志したノアは、下積み生活を経てトップ俳優の座に上り詰める。しかしいつしか己を見失っていったノアは、放蕩生活の末にスキャンダルをおこし、事務所を解雇されてしまうのだった。そんな彼がようやく手にした仕事は、顔出し禁止のスーツアクターとして、かつて父が務めた「MASK☆J」を演じるというものであった……。 HEROが教えてくれる“勇気”“諦めない心”、そして“愛”をテーマに、過去の栄光にしがみつき前に進めずにいた若者が、ハンデを乗り越え懸命に生きる女性との交流を経て、人生に再チャレンジする姿を描き出します。

あらすじはもうこれ読んでくれればいいんだけど(適当)キキちなのダブルスーツの画がただの二次元過ぎてまさおちゃん見慣れてるわたしでもかなりビビりました。ひとりでもおかしなあの頭身がふたり並ぶともうシナプスが脳に諸々を伝達させることを放棄するくらいには超常現象でしかなくて裸眼で確認しようがオペラ覗こうが深呼吸しようがもうわたしの大脳は機能を停止したまま戻らないのでためしにCGだと思うことにしたらなんとか脳死はせずに済みました...ほんとマジ勘弁してくれよ...なんだよCGかよ...最近のCGってなんかほんとすごいんですね...(放置)

 

ノア・テイラー(芹香斗亜)

スーツアクターだった父に反発して顔の出るスターにのぼりつめたノアなんだけど遅れてきた反抗期みたいな感じがやけにかわいくて、でも悪の手によってスターの座を奪われながらも周りの助けを得て父の真意を知り真のヒーローに成長していく様はまあキキちゃんの人柄はよく存じ上げないんだけど(すみません)きっと中の人の人柄が出てるんだろうなーくらいには人の好さがにじみ出ていて「あいつ素直じゃないけどどうも嫌いになれないんだよなー」な感じが役とマッチしていてとても良かったしなんというか...あの...キキちゃん、か、かっこよかったです(告白)。

 

テリー・ベネット(鳳月杏)

すっかり花男になったちなつ演じるテリーもまた表面では友(ノア)とぶつかりながらも心の内では友を思いそして妹を愛する心根の優しい人なんだけどウェーブのかかったシケからこぼれ落ちるちなつの色気と市販のジーンズでは丈が足りるのか心配になるくらいの脚の長さがそりゃ本人が願わずともスターに押し上げられるわなしかたねーわ...くらいの絶対的説得力がありました。

しかしキキちなは良いですな...ふたり似たような頭身体格をしていて兄弟みたいだしそんなふたりのデュエットのハモりが声の相性もよいのか本当に綺麗で耳がたいそう喜びました。

 

マイラ・パーカー(音くり寿)

今回初ヒロイン?ですか?なくり寿ちゃんはほんとかわいいですね...一見子役専科になりそうなビジュアルだけど彼女はちょっと大人びた役の方が合っているのかも知れません。声の感じも出し方によってはちょっと色気があって今回のマイラの(学生だけど)落ち着いた感じがとてもよく合ってました。まあでも回想シーンの子役もまったく無理なく馴染んでたし老若自在に演じられるのは一種の才能。100期生は『宝塚をどり』他月組の3本立てが初舞台で何十回と通って彼女たちの口上やラインダンスを見てきたからかそりゃ他の期より愛着は深いわけで、あの時すみれのロケットで誰よりも小さくて細くて心許なかった子が今やこうして別箱なれどヒロインを演るまでに成長しているだなんてこっちとしてはもはや親心です。よくここまでがんばった!!!これからも期待しています!!!

 

クロエ・スペンサー(朝月希和)

ノアのマネージャー、クロエを演じたひらめちゃんは最初から最後まであのテンションを一定に保っていてすげーなと思いました。途中まではどちらかというとクロエの方がヒロインっぽくてノアとの恋愛模様が描かれていくのかと思いきやまったくマイラに嫉妬する様子もなくて言ってみれば戦友的な関係だったということなんでしょうか。このあたりの描き方はちょっとわかりづらかった感もあったけどとにかく何事にも一生懸命で前向き過ぎてちょっと空気読めてない感じが絶妙でかわいかったです。

 

スマイル・スマイリー(天真みちる)

そして正義の味方☆スーパーヒーロー物になくてはならない悪役スマイリーを演じたタソ氏は悪になりきれない悪者を面白おかしくそして憎たらしく演じていて、なにより場の空気を掻っ攫う感はさすがのタソでした。花組だけに置いておくのはもったいない。はやく専科に行って各組を締めてもらいつつ未沙のえるさんを凌ぐ名バイプレイヤーとして宝塚に温存して欲しいです。タソ氏のあの個性は宝塚の宝です。

 

ハル・テイラー(綺城ひか理)

ノアの父、ハルを演じたあかちゃんもその頭身が素晴らしくてほんとこの作品のスーツアクターたちが日本の戦隊ヒーロー物の衰退を招いてしまうのではないかとヒヤヒヤしました。これほんと大丈夫でしょうか後楽園ホール界隈。赤坂ACTおよびDCに出現したスーツアクターたちはあれCGですからね?くれぐれもお間違いのないように(お前だよ)。

 

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しかし、久しぶりです。すっごく久しぶりです。なにがって、こんなにもストレスフリーに歌唱を聴けたのが、です。花組さんはあまり存じ上げない中で今回観劇したのですが、歌う人歌う人ほんと耳に優しくて歌えるって正義なんだなと改めて思いました。キキちゃん、ちなつ、くり寿ちゃん、ひらめちゃん、あかちゃん、芽吹さん、あと誰だ?とにかくみんな気持ちいいくらいに歌えててだからキキちなのデュエットだけでなくキキくり寿のデュエットもハモりが気持ちよかったしちょっとこのメンバーでなにか本格的なミュージカルとかやらないですかね...劇団にお手紙書けばいいですかね...(真顔)

 

 

そして「MASK☆J」を「MASAKI☆J」に空目したのはこれまさお担必ず通る道なのでしかたないことだし避けられない罪だと思いつつもいちおう自白しておきます。まさおちゃんが「MASAKI☆J」のスーツ付けて「CHANGE THE JUSTICE!!」(シャキーーン!)って決めポーズしてるのがほんと想像に容易くて、昨日は錚々たるモデル陣の中を我負けじとランウェイをキメてたまさおちゃんだけどこっちのキメもドヤ顔でやってのけそうでほんと相変わらず両極に振れにいくまさおちゃんが結局愛おしいってことです...という感想で締めたいと思います。どこを辿ってもまさおちゃんに行きつく安定感は我ながら自慢です(きりっ)。