愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

日生劇場『グレート・ギャツビー』

ミュージカルグレート・ギャツビー

日生劇場 2017年5月8日~5月29日/中日劇場 2017年6月3日~6月15日 
梅田芸術劇場メインホール 2017年7月4日~7月16日博多座 2017年7月20日~7月25日
音楽/リチャード・オベラッカー 
脚本・演出/小池修一郎
音楽監督/太田健
振付/桜木涼介
美術/松井るみ
出演/井上芳雄・夢咲ねね・広瀬友祐畠中洋・青乃夕妃・AKANE LIV・田代万里生 他

『グレート・ギャツビー』日生劇場 梅田芸術劇場 博多座 中日劇場

 

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「ちょっと急いでもらえますか?」このセリフ初めて言いました。わたしタクシーってちょっぴり苦手で、こちらが客であるはずなのに妙に恐縮しておとなしく礼儀正しくでも話しかけないでオーラを醸し出すために無駄にスマホいじったりしている変なところチキンな人なんだけど、だから結構どきどきしながらはじめてこんなこと言いました。

仕事のスケジュールをネットワーク上で共有できちゃうそんな世の中はポイズンだなーと思うくらいには空いているところには容赦なく予定を詰め込まれる昨今ゆえ早く帰りたい日には「18時退社」みたいに(ここから先は予定入れんじゃないぞおら)的なストッパーをかけてるんだけどまあうっかりしちゃったのがまさかのこの日で17時からの来客を入れられてしまってもう頭の中走馬灯のようにいろんなまさおちゃんが(まさおちゃんなんですね)流れていくくらいには人生詰んだ感で頭を抱えたんだけど、早く帰りたいオーラを察してくれたのか(失礼)17時45分には解放されてそのままダッシュで会社前でタクシー捕まえて件のセリフを言ったわけです。結果乗ったタクシーの運転手さんがいい人だったおかげで「何時から始まるの?」「18時です」「じゃあ頑張って急ぎますね」からの外堀通りの帝劇過ぎたあたりで「この先混んでるからここから歩いた方が早いよ」言ってくれたおかげでそこから小走りで劇場に入ること開演2分前、無事間に合いました。あの時の運転手さん、さんきゅー。君を忘れない(誰)。

 

わたしにとってのギャツビー

もう283万回は言ってるから知ってるとは思うけどわたしの前の贔屓が杜けあきさんなわけでしかも彼女の大劇場作品の中で何が一番好きかと聞かれたら迷いなく『華麗なるギャツビー』と答えるくらいにはわたしにとっては特別な作品なわけです。カリンチョのギャツビーは本当に素晴らしくて、突堤で対岸のデイジー宅を見つめるその背中に269回は泣かされたし(そんなに公演していません)、とにかくいちいちかっこよくていちいちかっこよかったです(二度言いました)。そしてこの作品で退団した鮎ちゃんに引き続き、中日劇場の同作品でお披露目したともちゃん、いずれのデイジーも甲乙付け難くだいすきでした。特に鮎ちゃんはそもそもの美貌に退団オーラが相まってまさに薔薇より美しいデイジーだったし、この役を演るために今ここにいてこの役を演れたからこれでもう退団するんだろうなーと思わされるくらいの説得力がハンパないやつでした。

 

同じ作品で違う作品でした

さて、今回のギャツビー@日生劇場を観てきたわけですが、脚本や展開はほぼほぼあの時のままなれど曲がもうひとつ残らずすべて変わっていました。セリフはあのままなのにそこに流れる曲が違うからなんかこうちょっとみぞみぞしちゃったのは初演ファンのいかんところだよなーとはわかりつつもやっぱり脳内にはあの時のあの曲が鮮やかに蘇るわけでして。『朝日が昇る前に』や『デイジー』はもちろん、マートルの歌うフラッパーな曲もアイスキャッスルのアウトローなブルースもそれどころか単なるBGM的な曲ですらいちいち当時の曲が否応なしに浮かんでくる始末だし、逆にセリフは同じなので「私がギャツビーです」「ワンスモア」「君は薔薇より美しい」なんてセリフを芳雄ちゃんが発するたびに被るようにカリンチョのええ声が鮮明に耳に聞こえてきてほんと困ったんだけどでもほんとええ声だったわカリンチョ......ってこれ以上耽るとうるさくなりそうなのでこのへんにしておきます(引き際)。

 

とは言いながらも良き配役でした

ジェイ・ギャツビー(井上芳雄

芳雄ちゃんはどちらかというと映画版に近いギャツビーでした。ディカプリオではなくロバート・レッドフォードの方だけど(そっちしか観てない)。カリンチョやあさこさんほど完璧ではない、人間臭いギャツビーでそれはそれでデイジーへの言ってしまえば重すぎる愛の行きどころを探してもがいている感じが漏れ出ていてよかったです。ただ、ニンに合っていたか?と聞かれたらちょっと違うかな...くらいな違和感はありました。ただ歌は上手い。さすがです。芳雄ちゃんの歌声、わたし好きです。

前出のとおり、曲は違えどセリフはほぼまんまだったのでやっぱりカリンチョと比べてしまうところはありつつまあ宝塚の男役は独特だからね...某月組前トップスターほどではないにせよ男役独特の節回しに毒されているところがヅカヲタ四半世紀やってるとありはするのでそれと比べちゃいけないなーと思いつつも「君は薔薇より美しい」なんてセリフをあんなに気障にええ声でかっこよく発するのはやっぱり宝塚の男役だからであって、芳雄ちゃんにそれを求めてはいけない。ってまあ何が言いたいかって、そういう要所要所の決め台詞がわたし的には淡泊過ぎました、ってことを言外に言いたかったわけです。ほんとこのヅカ脳ェ...(溜息)。

 

デイジー・ブキャナン(夢咲ねね)

ねねちゃんマジかわいかったんだけど!!?!前にも言ったかもだけど私現役時代はねねちゃんあまり好きではなくてでも『1789』のオランプで印象がすっかり変わってねねちゃん好きになってのデイジーだったってのもあるけどほんとかわいかった!衣装もどれもこれもかわいくてほんとおにんぎょさんみたいだったしやっぱり長年ヒロインやってきただけあって主演(男)を立てつつのヒロインの立ち位置がわかっているというか絶妙にうまい気がしました。まあお歌はもう少し頑張った方がいいかなーと思いつつも本人比で現役中より上手くなっている気がするし全般的に満足です。ギャツビー邸に飾られていたたくさんのデイジーの写真がどれもこれもかわいいねねちゃんで、色鮮やかなシャツたちを舞わせている芳雄ちゃんを尻目についついオペラで写真を覗き込んでしまったことを白状しておきます。

あとこれは演出が変わったのがいけないんだけど、出会いの回想シーンでの自己紹介が歌に変わっていたのがちょっと残念でした。

「あなたが遅れてきて私の番になったのは運命だったのよ?」

「運命の神に感謝します!」

「中尉さん、お名前は?」

「ギャツビー。ジェイ・ギャツビー。」

「君は?」

「デイジー!」

 のくだりがだいすきなのでここが歌になってしまったのがなー。まだ少女だったデイジーが思いっきり背伸びして大人びて言う鮎ちゃんの「デイジー!」に対してともちゃんの屈託のない等身大の「デイジー!」が全く違っていてでもどちらも好きでした。

 

トム・ブキャナン(広瀬友祐

デイジーの夫でマートルと不倫中のマッスル男...っていう偏見を持ってしまったのは「トレーニングは毎日やってるよ」が合言葉になってしまった某海峡ひろきさん...というかそれをネタに弄っていたカリンチョが悪いんだけど(言いがかり)、なんだかもう不倫を家に持ち込むわデイジーは手放したくないわ男の約束平気で反故にするわでほんとこのストーリーの元凶的な役どころをくるっくるにアテたパーマと口髭によって適度に嫌な奴に仕上げてきていてほんとイライラしてよかったです(褒めてます)。

確か観劇時(5/16)はまだ『1789』のその他のキャストが発表になってなかったと思うんだけど、観劇しながら(この人がまさおちゃんの初キスシーンの相手役になるのか...)という邪念が湧いてしまってついつい厳しい目で見てしまってほんと申し訳なかったです。まさおちゃんのことどうかよろしくお願いします(土下座)(立ち位置)。

 

ニック・キャラウェイ(田代万里生)

宝塚版では二番手男役がキャスティングされる重要役。誰も、デイジーでさえも真のギャツビーを理解してくれようとしない中で唯一すべてを理解してくれる人で、この人がいてくれたおかげでギャツビーも死してなんとか報われたってわけです。真面目なサラリーマンで裏街道を歩くギャツビーとは相容れない感じながらも最後には真の、そして唯一の親友になってくれるニックという人物がストーリーテラー的な役割も担ってくれたおかげで、ギャツビーの真の姿が見えやすくなってだから余計にギャツビーの思いが切なくて泣けました。こちらもやっぱり一路色がわたしの中ではどうしても強くなっちゃう中で真面目でお堅い、だけどちゃんとギャツビーの内面を理解してくれる熱さみたいなものを感じられる良きニックでした。

 

マートル・ウィルソン(青乃夕妃)

まりもちゃん...だいぶ肥えましたね...。現役当時の割れた腹筋はどこへやら、すっごく肉感的になっていました。でもそれがかえって地味な暮らしに飽き飽きしてトムとの恋に嵌っていくちょっとふしだらなマートル像に近くて結果良かったと思います。トムとの濃厚なキスシーンもあってちょっとどきどきしたけど後半の半狂乱のマートルは化粧も崩して全力で演じていてその凄まじさに引き込まれました。お歌はやっぱりもうちょっと頑張ってほしかったかなー。

実はキャスティングが発表される前、まさきさんだったら断然マートルだよなあーと思っていたのでちょっとだけ期待していたりもしたんだけど蓋を開けてみたらあまりにもラブシーンが濃厚だったのでとりあえず次回のキャスティングはスルーでおねがいします(誰もオファーしていない)。

 

 

*****

そうそう、カリンチョも言ってたけど初演雪組にもぐり酒場のウエイトレスで出ていた渚あきちゃんが今回はなんとデイジーの母を演っていてほんと時の流れを感じました。砂糖壺に入った氷をカップに入れるときの仕草がかわいかったなーとふと思い出しました(細かい)。

そしてコロちゃんはキャサリン役、AKANE LIVさんはジョーダン役、七瀬りりこちゃんもパメラ役で出ていて、主要な女役はすべて娘役OGだったのがちょっとびっくりでした。娘役さんの方が比較的若くして退団するし使い勝手がよいのかなーやっぱり。

 

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そして劇場を後にするときに入口付近にチラシが置かれていてまあ次回の公演案内かなにかかなーと思ってスルーしつつ横目でチラ見したらそこにカリンチョの姿があったので思わず人並みに逆らって劇場内に戻りなんとかゲットいたしました。なんだよー座談会の記事ならそうだと言といってくれないとこのまま帰るところだったじゃんかよー。ギャツビー三者対談、なかなかに興味深いものでした。ここからも見れるのでぜひ。...てかリーフレットと少し内容が違うようです。『朝日の昇る前に』をカラオケで歌う芳雄ちゃんちょっと見てみたいじゃないか...

 

最後に、劇場に向かうタクシーの中から帝国劇場の壁面に貼られた『1789』のポスターにある「龍真咲」の文字を見てなんかこう、帝劇界隈の方々に酷く恐縮してしまったことを申し添えて終わりにしたいと思います。まさお担あるある。