愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

トップ就任おめでとうございます ◆ '18・宙組『WEST SIDE STORY』

 真風涼帆・星風まどかのトップコンビプレお披露目公演。

 

 マミさんのもノルさんのも観ていないので宝塚作品としては初見でした。50~60年代の洋画が好きだった母の影響で映画は観ていたものの、それだってもう20年以上前のこと。ただストーリーはアメリカ版ロミジュリだからねー。勝手知ったる、という感じ。

 

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1957年にブロードウェイで初演後、圧倒的なダンスと心揺さぶる名曲の数々で大ヒットしたミュージカルの最高傑作の一つ。

宝塚歌劇においては、1968年に月・雪組合同で上演、ダイナミックなダンスが評価され、その年の芸術祭大賞を受賞、1998年の月組、1999年の星組による再演も大好評を博しました。 20世紀を代表する音楽家の一人である「レナード・バーンスタイン氏の生誕100周年」にあたる2018年、ブロードウェイからスタッフを迎え、宝塚歌劇版として新たなバージョンに挑みます。

宙組誕生20周年の幕開けを飾ると共に、新トップコンビ真風涼帆と星風まどかのお披露目公演となる伝説のミュージカル作品『WEST SIDE STORY』に、どうぞご期待下さい。

 

 当時のニューヨークの社会的背景も移民問題もあまりピンとこない身としてはただの不良グループ同士の対立として浅く見てしまいがちなんだけどでもきっと彼らにはすっごい根深い確執があるんだろうなーと思いながら観ていました。ロミジュリをなぞった若い男女の2日間の恋、って言ってしまえばそれまでなんだけどシェイクスピア作品と違ってちょっと浮世離れしたファンタジー感がないからなのか、それだけでは収まらないなにか深くて重いものを感じもしました。

 作品としてはどうも脳内イケコ版ロミジュリに毒されてしまっているからなのか、ちょっと抑揚が弱かった気もしてそこはわたし的には残念だったんだけど反してあのあっさりとしたエンディングは決して嫌いではなかったりする。マリアやアニータ、ジェッツやシャークスの残された男たちの幕が下りた後の人生を自由に想像できるバッファーをもらえた、そんな感覚です。

 ナンバーについては聞きなじみのある曲がいくつもあってすっごく楽しめたんだけどでも全般的にトニーとマリアばかりにソロ歌が偏ってしまっていてあとはコーラスが多かったのが残念でした。なんのための専科からの英真さん???と思うくらいには全く歌ウマのじゅんこさんが歌ってないし、これが組替え後初舞台となる二番手キキちゃんにすらフルでのソロがない。まあこれはフレンチミュージカルと違ってブロードウェイミュージカルが演出の改変を良しとしない石頭っぷりゆえのことだろうから仕方のないことなんだろうけど、それでもやっぱり残念だった。個人的にじゅんこさんの歌は金払ってでも聴く価値があると思っているのですっごい楽しみにしてたんだよー。

 

 

アニータ(和希そら)

 ソラカズキさいこうだったんですけど!?!!?断然圧倒的わたし的MVPです。正直なところを言ってしまえば、ジュンコさんもキキちゃんも歌わない中ではただひとり歌が安定していたし、この時代の女性にあって自己を確立しようとする強さと、ベルナルドを愛し、でもそんなベルナルドを殺した男を愛するマリアをも慈しみ、結果トニーとマリアのふたりを赦すその優しさとの共存のしかたが素晴らしかったです。マリアの願いを聞き入れ、ドクのドラッグストアに伝言を伝えに行った彼女に向けられた男たちの容赦ない言葉と暴力に嘆き、絶望するその姿は本当に痛々しくてだから余計に男たちの無惨な残酷さに憤りを感じずにはいられませんでした。ほんとうに素晴らしい最高のアニータでした!

 

リフ(桜木みなと)

 ジェッツの現リーダー。ということなんだけど今回はちょっと印象薄かったかなー。ベルナルドよりもソロ歌あったと思うしロミジュリで言うところのマーキューシオだと思うとそれなりの役どころなはずなのに本当に印象薄かった...でもマーキューシオと同じに無駄に尖っている感じやジェッツ愛というか誇りみたいなものが人一倍強いんだろうなーというのはすごく感じました。てかなにより恋人ヴェルマはかわいかった!ダンスもキレッキレだったし!いい女見つけたよリフ!!!(※エビちゃん好きという100%私情)

 

ドク(英真なおき

 月組ロミジュリでロレンス神父を演られていたのがそのままドクにスライドした感じ。まあロレンス神父よりは人間小さいし、中立というよりはどっちつかずみたいな役どころでもあるんだけどドラッグストアにじゅんこさんがいることの不思議な安心感w だけどやっぱりじゅんこさんの盛大なる無駄使い感ハンパないです。じゅんこさんに全くソロを歌わせない意味とは!?もはや広辞苑の「宝の持ち腐れ」に“英真なおきをミュージカルに出演させながらいっさい歌わせないこと”くらいのこと書いてあるんじゃ!?くらいには本当に宝の持ち腐れだったよあれ...

 

ベルナルド(芹香斗亜)

 黒塗りキキちゃんかっこよかったです。こちらはロミジュリで言うところのティボルト...なんだけど本作ではマリアの兄。キキちゃん良かったよ...社会的に弾かれていることへのやり場のない憤りを決闘で発散しているような鬱憤とマリアへの家族愛。そしてアニータへのちょっとつっぱったようなぞんざいな愛情表現に萌えました。なんだけどやっぱり二番手役なのに歌がほぼないのが致命的...キキちゃんには苦悩に悶えるような歌を歌って欲しいしそんな歌が似合うと思っているのでベルナルドの気持ちを吐露するような歌、歌ってほしかったです。残念。

 

マリア(星風まどか)

 少女がお洒落に恋に背伸びしている感がぴったりのマリアでした。黒塗りのお化粧がまだちょっと不慣れなのか、せっかくのまどかちゃんのキュートなお顔立ちを生かせていなかったのは残念だけどこれからだもんね。歌は高音がちょっと厳しい感じがして聴いているこちらがちょっと苦しくなったりもしたけど、トニーの死の場面のマリアの鬼気迫る演技は素晴らしかった。劇場が彼女の一挙手一投足に固唾をのんで見入る...そんな空気感の中演じきったまどかちゃんあっぱれでした。まあトニーとのベッドシーンはやっぱりどこかロリコンみが出てしまっているのはもう真風とまどかの宿命でしょうか。

 

トニー(真風涼帆)

 主演男役就任おめでとうございます!こういうアメリカンな役とても合っていて...というかもうリアル男子にしか見えなくて混乱しました。ベストジーニスト賞(※男子の部)今年狙えるのでは!?くらいなジーンズとスニーカーの似合いっぷりだったしマリアに恋する純情はロミオのそれを超えるくらいで真風比でちゃんと少年に寄せてきていて良かったです。兄を殺してしまったことをマリアに告げにいくところはちょっと言い訳がましく感じてしまってまあそれは脚本がいけないということはわかりつつも、もう少し罪をまっすぐ認めたうえで愛と赦しを請うて欲しかったなーと思いました。でも立場が人を作る、ってのをまさに体現しているような、素晴らしいゼロ番でした。

 

 

 

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 お披露目としてはとても良い作品だけどこれきっと映像化されないんだよなーと思うとファンとしてはちょっと切ないですよね。お披露目公演の記憶を脳内に留めておくことしかできない無力さ。せめてCDだけでも出してあげて欲しいです(立ち位置謎)。

 

 そして観劇した日がちょうどちゃぴの退団記者会見の日だったってのもあって、どうしてもまさちゃぴのロミジュリが脳を過って困りました。同時に昨年のコンサートでブロードウェイキャストとデュエットした「Tonight」のまさきちゃんの声まで聴こえてきて、目の前ではまかまどが見つめ合いながら歌っているのに脳内はまさきちゃんロミオとちゃぴジュリエットとまさきちゃんマリアが混線しちゃって大変でした、っていう、相変わらずのエンディング。すみません。でも反省はしてません。

 

 

MUSICALWEST SIDE STORY

宙組公演 『WEST SIDE STORY』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

東京国際フォーラム ホールC 2018年1月12日~1月25日

原案:ジェローム・ロビンス / 脚本:アーサー・ロレンツ / 音楽:レナード・バーンスタイン / 作詞:スティーブン・ソンドハイム / オリジナルプロダクション演出・振付:ジェローム・ロビンス / 演出・振付:ジョシュア・ベルガッセ / 演出補・訳詞:稲葉 太地 / 主演:真風涼帆・星風まどか