愛あればこそ

愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

ちょっと待ってこれすっごく切ないやつなんだけど。3連休の一日、家でまったりしているなかで何気なくWOWOWでやってるのを観たんだけどなんかもうどう考えてもどうにもできないふたりの状況がすっごく切なくなっちゃって泣かずにはいられないやつでした。 

京都の美大に通う20歳の学生・南山高寿(福士蒼汰)は、いつものように大学まで向かう電車の中で出会った女性・福寿愛美(小松菜奈)を一目見た瞬間、恋に落ちた。勇気を振り絞って声をかけ、「また会える?」と約束を取り付けようとした高寿だったが、それを聞いた彼女は、なぜか、突然涙してしまうー。彼女のこの時の涙の理由を知る由もない高寿だったが、不器用な自分を受け入れてくれる愛美にますます惹かれてゆく。そして、親友・上山(東出昌大)からの後押しもあり、初めてのデートで告白をして、見事OKをもらい交際をスタートさせる。初めて手をつなぎ、初めて名前で呼び合う、そんな初めてのことがあるたびに泣く愛美のことを少し不思議に思いながらも、より愛美への愛情を深めていく高寿。そんな二人の関係は、誰もがうらやむ程に順調で、すべてがうまくいくものだと信じていた・・・。

 

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まず小松菜奈ちゃん?わたし知らなかったんだけどすっごい透明感あってちょっと浮世離れした感じの雰囲気がすっごい愛美に合っててよかったし福士くんのイケなのにどこか土っぽい感じがそんな愛美とのコントラストを際立たせていてよかったから主演ふたりのキャスティングは大成功だと思うんだけどでも大学生な東出昌大くんってのがちょっと無理ありすぎない?って思ったのはここだけの話にしておく。アイツけっこういいやつだったし(関係ない)。

愛美の秘密が明かされない前半は不思議ちゃん?もしくは人外?相手の恋愛映画なのかなー?と思いながら見てたんだけど秘密が明かされてからの後半からと極めつけは最後の愛美視点で繰り返されるストーリーがもう切なすぎてむりなやつだった。

付き合って間もない彼の親友に初対面で言う「南山くんのことこれからもよろしくお願いします」みたいなセリフがすっごい違和感あって親友相手にいきなりウエメセかよ!と愛美にツッコみたくなったし、高寿から交際申し込まれた時や初めて手をつないだ時にもいちいち泣いてる愛美にまあなんかワケありなんだろうなーとは思いながらもなんだコイツ感拭えなかったそんな薄っぺらい前半のわたしを後半の全てを知ったわたしが思いっきりボコりたいくらいには誰よりも愛美ちゃんが悲しくて切なくて辛いやつでした。

 

ここからはあざやかにネタバレしていくから困る人は戻って欲しいんだけど、別世界からやってきた愛美はこちらの世界とは逆の時間軸を生きていてだから高寿の明日は愛美の昨日になるわけで、前半そのあたりの秘密がまだ明かされない最後の最後あたり(映画の中盤あたり)でやっと映画タイトルが出てくるのがすごく斬新でした。ただ5年に一度、30日間だけがふたりが交われる時間、っていうのがちょっとむりあったし、一日の中では同じように時間軸は流れてるようにも見えるしじゃあ日が変わる瞬間には愛美の時間はどうねじ曲がるんだろうか?みたいなツッコミどころは要所要所にありはしたんだけど、キリンの絵が展示されることを知っていたのも、おかあさんの隠し味を知っていたことも、謎が解ければすべて納得いくし、冒頭の(高寿的には)出会いの場面で初対面の男に対して別れ際に「またあしたね」って言いながら愛美が泣いている理由がわかったときには胸が苦しくなった。交際を申し込まれた日は愛美にとってはそれを境に距離を置かなければならない日。初めて手をつないだ日は愛美にとっては高寿と手をつなぐのはこれが最後。出会いの場面で別れ際に泣いていたのはもうこれが高寿と会う最後の瞬間だったから。

じゃあ、そんな(愛美にとっての)未来を、高寿から過去のこととして聞いていた未来をなぞるようなことをせずに、敢えて変えていったらふたりの未来が変わるかもしれない。でも5歳のときに死にかけた高寿を35歳の愛美が助け、35歳になった高寿が5歳に戻った愛美の命を救う。そのふたつの事実がある限り高寿は過去から未来へ、愛美は未来から過去へ、その敷かれたレールを生きていく選択肢しかない。そうでないと15年後(前)に交わるふたりのものがたりは生まれないのだから。そう思うと無性に切なくて泣かずにはいられませんでした。

 

冒頭からずっと通常世界を生きる高寿目線で描かれていくこのストーリーが、高寿の30日目、いわば愛美の1日目が終わったところから今度は愛美目線でストーリーが進んでいくのが逆走する時間軸を視覚的に感じることが出来てそれは想像以上に悲しくてつらいものがたりでした。高寿の30日目、高寿にとっては愛美と愛し合い、絆を育んでなお別れなければならない日。だけどその日は愛美にとっては高寿との出会いの日。記憶に留めておこうと愛美の絵を描く高寿に対して少しよそよそしく話しかけてくる愛美。そんな愛美を見て涙ぐみながら「涙もろいんだ」という高寿の言葉が、かつて交際を申し込んだ日に涙ぐみながら愛美が言った「わたし涙もろいの」っていう言葉とリンクしてすっごい泣けました。いい映画。

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』オフィシャルサイト

劇場公開日:2016年12月17日

原作:七月隆文ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(宝島社)/ 監督:三木孝浩/ 脚本:吉田智子/ 音楽:松谷卓/ 主題歌:back number「ハッピーエンド」(ユニバーサルシグマ)/ 製作:市川南 / 共同製作:村田嘉邦・弓矢政法・高橋誠・大川ナオ・吉川英作・山本浩・荒波修 / エグゼクティブプロデューサー:山内章弘 / 企画・プロデュース:臼井央・春名慶 / プロデューサー:川田尚広・西野智也/ 撮影:山田康介/ 美術:花谷秀文/ 録音:豊田真一/ 照明:川辺隆之/ 編集:坂東直哉 / 助監督:清水勇気 / 製作担当:鳥越道昭 / 装飾:高木理己 / 視覚効果:鎌田康介 / スタイリスト:望月恵 / ヘアメーク:ワシダトモキ / スクリプター:古保美友紀 / 音楽プロデューサー:北原京子 / プロダクション統括:佐藤毅 / 協力:京都市叡山電鉄・京阪レジャーサービス・京都精華大学 / 配給:東宝 / 製作プロダクション:東宝映画 / 製作:「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」製作委員会(東宝博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、ジェイアール東日本企画KDDI研音、日本出版販売、博報堂GYAO