愛あればこそ

宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

映像に残らない名作 ◆ 星組『ガイズ&ドールズ』

 

ブロードウェイ・ミュージカルガイズ&ドールズ
星組宝塚大劇場 2015年8月21日~9月28日/東京宝塚劇場 10月16日~11月22日
原作/デイモン・ラニヨン
作曲・作詞/フランク・レッサー
脚本/ジョー・スワーリング、エイブ・ハロウズ
脚色・演出/酒井澄夫
翻訳/青木陽治 訳詞/岩谷時子
主演/北翔海莉・妃海風
 

星組公演 『ガイズ&ドールズ』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

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星組『ガイズ&ドールズ』観てきました。
 
 
『ガイズ&ドールズ』は私にとって懐かしい特別な作品です。
杜けあきさん宝塚退団後の初舞台。サラを演じました。つい2か月前までは青天被って「もはやこれで...思い残すことはござらんっ(キリッ)」言ってた人が。いくら軍曹の役とは言え初めての恋に歓喜する女性サラを演じている。すっごく新鮮でした。
 
当時のキャストはこんな感じ。
 
スカイ:田原俊彦
サラ:杜けあき
ネイサン:深沢敦
アデレイド:久野綾希子
 
サラ、思いの外可愛かったの。声も裏声が多くなりはしたけど綺麗なソプラノが出ていたし。あんなに青天が似合っていた人がスカートひらひらさせてて。なんかきゅんきゅんした。作品自体もとっても心温まるハッピーなミュージカルで。サラがスカイとハバナから戻った時にアーヴァイドに「どこに行ってたんだ」聞かれて「キューバよ」答えた後のアーヴァイドさんが発する「きゅー...!?」に毎回なぜか笑いのツボを突かれていて。笑って泣いて本当に素晴らしい舞台だった。
 
のに。
 
中日を過ぎたあたりだったかな...。教団に来たスカイに無理やりキスをされるシーンでスカイの唇にサラの口紅がべたーっついていて。中日くらいまではそんなことなかったのにその後はそれが普通になっていって。初めてそれを観たときは日生劇場の二階席で悔しくて号泣。最初からではなく途中からエアーをやめて本気でキスするようになった、っていう経過に余計に涙した。しかもお相手が(あまり好きではなかった)田原俊彦さんで...。
その日から後半の観劇はすっごくフクザツでした。私自身がバカで単純な性格ゆえにその一件以降田原さんのことが大嫌いになって(ファンの方スミマセン)だから舞台を観るのが半分苦痛だった。それでもかりんとの舞台は大好きで。全力でサラを演じているかりんとだけを観ようと通い詰めた作品。
 
 
なんです。ほんと前置き。いい加減にしろって話ですよね。スミマセン。
 
 
さて、気を取り直して星組さんの『ガイズ&ドールズ』
前の記事にも書いた通り先に新人公演を観てからの本公演でした。

 

新人公演も素晴らしかったけど、やっぱりこうして観ると本公演ですね。芝居の流れもスムーズだし纏まりのある素晴らしい舞台でした。つくづくこの作品が映像として残らないのは残念で仕方ありません。その点フレンチミュージカルの甘さよ。本当にありがたいです。

 
スカイ・マスターソン(北翔海莉)。流石の歌唱。朗々と歌い上げる。でもね。スカイじゃないの。スカイは伝説のギャンブラーだよ。一本筋は通っているけどワルには変わりない。それが全く見えなくて。その辺にいるちょっと気障ででも真面目な青年が頑張ってサイコロ振ってみました、的な。カリスマ性が全く感じられない。「女神よ今夜だけ」の地下の場面はあそこスカイの見せどころなのに一世一代の賭けに出る伝説のギャンブラー感ゼロ。歌も優等生が歌っているようでスカイじゃない。もっと役として表現力豊かに歌ってくれないとなー。だから最後に改心して救世軍に入るという起承転結の「結」がはっきりせずぼやけてしまった感。
 
ずっと思ってることなんだけど、宙組まぁみり王家、星組みちふうガイズ、これ入れ替えて欲しかった。まぁさまはラダメス素敵だったけど、どちらかというと北翔さんの方がどしっとした将軍ラダメスの威厳を出せたと思うしスカイに至ってはまぁさまでしょ。北翔さんの役ではない。まぁさまの“まぁさま”感(なんだそれ)と生まれ持って身についている自然なチャラさと思い切りの良さは絶対スカイ向きなんだけどなあ。まあ、劇団もPも何も考えてないわけじゃないだろうからこれ以上は言わないけど。
 
やっぱり18年?も男役をやっているとよくも悪くも自身の男役像が確立されちゃうから役も選んじゃうんだろうなあ、という今回はちょっと残念な印象でした。
 
 
サラ・ブラウン(妃海風)。風ちゃんの持ち味、イマイチよくわかっていないけどお堅い女軍曹役とても似合ってました。でもお歌は言うほどお上手ではない?いや、言うほど、ね。上手いのは確かだけど北翔さんと“歌のコンビ”と言われるほどの歌唱力ではなかったなー。酔っ払い風ちゃんは可愛かった。新公のサラがあざとさが出てしまっていた分、風ちゃんは何もわからず本当に酔っぱらって楽しくなっている感が出ていて良かった。ただ私サラに対しては厳しいからね(笑)。惚れてはいけない相手(ギャンブラー)にどうしても惹かれてしまう葛藤、みたいなものがちょっと薄かった印象。
 
ネイサン・デトロイト(紅ゆずる)。紅さん、良かったの。ごめん、紅さんに対しては期待値が低いところから入ってしまうきらいがあるんだけど結果意外と良かったの。歌もお上手になられていて。そしてネイサンが役としてちゃんと息づいていてアデレイドへの深い愛も見てとれたしアドリブも迷走してなかった(観た回がたまたまかもだけど)。
 
アデレイド(礼真琴)。先に真彩ちゃんのアデレイド観ちゃってるからかもだけど、ちょっと場末感。でももしかしたらそれで正解なのかも知れないなーと思うくらいには礼真琴のアデレイドを確立させてました。真彩ちゃんもアデレイドだったけど琴ちゃんもアデレイド。すっごく難しい役だと思うのにふたりともそれぞれのアデレイド像を立派に演じていました。琴ちゃんは歌も上手いだけじゃない、表現力豊かに歌っていてとても素晴らしかった。
 
 
しかし。岩谷時子さんの訳詞は艶があっていいですよね。昨年『岩谷時子メモリアルコンサート』に行ったのですがあの歌もこの歌も岩谷さん訳詞だったんだ!という驚きばかりでした。
 
女神よ今夜だけ せめて女らしく

って訳詞。女神に対して「せめて女らしく」ですよ。原詞は

Luck be a lady tonight

を繰り返してるだけなのに。そのまま訳すと「今夜幸運よ女性となれ」なのかな?それを「せめて女らしく」と訳詞をつけてしまう岩谷時子さん。女神に対してその言い草。かっこいいです。
 
恋のワイン 甘く強く
心に歌 溢れてくる

『初めての恋』この訳詞は本当に美しい。 主人公の胸の高鳴りが聞こえてきそうな歌詞。そして原曲ありきの訳詞に関してはちゃんとメロディラインに添うように原詞のイメージを崩さない範囲で岩谷時子さんらしい言葉を選んでるんだろうと推測できる。

 

数ある曲の中ではネイサンとアデレイドのデュエット?あれがすごく好きで。ネイサンが歌う「I love you」に被せるようにアデレイドがネイサンへの不満をぶちまけて「死んじゃいたいわ」って歌う曲。アデレイド→ネイサンの通常パターンを逆転する曲なれどまあ言ってしまえば夫婦の会話は家でやれ的な歌で。ふたりがキュートで大好きです。

あーでもどの曲も好き。船が揺れる歌もサラがベルになっちゃう歌もサラとアデレイドで結婚しような歌も。どれもちゃんとタイトル知りません。スミマセン。

 

 
最後に。これ書くのやめようかと思ったのですが、実際感じてしまったことなので書きます。私感です。今回、みちふうは紅琴に完璧に負けてしまっていたように感じました。ネイサンとアデレイドが単体としてもそしてコンビとしてもとても良かったのでどちらが主演コンビかわからなくなってしまうほどで。ああ、0番に立ってるからスカイが主演か。スカイとサラが主演コンビか。みたいな。
 
やっぱり作品かなー。北翔さんのフランツはすごく良かっただけにちょっと期待し過ぎてたのもあるかも。次作『こうもり』に期待。
 
 
(参考記事)