愛あればこそ

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宝塚愛をこじらせたヅカヲタの戯言

ちぎみゆの自然なコンビ感 ◆ '16・雪組『私立探偵ケイレブ・ハント』

ミュージカル・ロマン『私立探偵ケイレブ・ハント』
宝塚大劇場 2016年10月7日~11月7日東京宝塚劇場 2016年11月25日~12月25日
作・演出/正塚晴彦
主演/早霧せいな・咲妃みゆ

 

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ハリー・マサツカ作品の難解さは相変わらずだわ...一度や二度観たくらいではわたしの弱い頭では到底理解しきれない。相変わらず舞台は暗くて眠気を誘うしマイノリティにしかウケなさそうな不思議な笑いを入れ込んでくるのも定番。

といいながらも正塚先生独特の男女の微妙な機微というか台詞には起こしきれなさそうな(良い意味で)くだらない男女のごくごく普通にありえそうなやりとりが絶妙に描かれててやっぱりすごいなーと思うしそういうところは好きだったりする。ケイレブとイヴォンヌの喧嘩のシーンなんてほんと上手いと思う。

今回ひさびさ(初?)にだいもんがちぎたと敵対しないということで初日前から話題になってたけど、蓋開けてみたらやっぱりだいもんには悪が似合うなあと思った次第です。主演に敵対するしないではなくて、なにか黒いものを内に秘めた“悪”というより“陰”と言った方がよいのか...真ん中ではなく脇に立つ場合に限ってはそんな役どころが合ってる気がしました。『オーシャンズ11』のベネディクトなんてその最たる例。今回はちぎたの相棒的な役割でちょっと三枚目風味もありそれはそれで美味しい役どころだったけど、ちょっと(演出的に)押し出しが甘いというか印象に残りづらくて、余計にもったいなかった。だいもんの無駄使い。

それに反してれいこは美味しかった。こちらも人物像的には悪になりきれないというかイマイチ細部まで描き切れていないがゆえに(結局なにがしたいのこいつは)みたいなもやもやが残りはしたけどあの美しい顔面を歪めたりしたったりドヤったりでれいこの顔面愉しみ放題だった。ちょっと嫌味のあるふふん的な芝居うまかったです。

番手的にはだいもん→咲ちゃん→翔くん→れいこ、みたいな感じ(合ってる?)だと思うのだけど、咲ちゃんよりも翔くんよりもれいこ目立ってたし男役としても美味しい役だった。これが本公演としては雪組最後だから、餞的な意味もあるのかな。ハクを付けて月組に送り出す、的な意味も。ショーでもフィナーレ冒頭の銀橋ソロもらってたし。

 

ちぎみゆは言うほどラブラブな演出ではなかった。あ、いい意味で、です。芝居を壊さない、ストーリーをぶちきらないちょうどよい関係性でとてもよかった。今や某理事長が「史上最高のコンビ」と言い放ったほどのコンビ売り商品だしやっぱり前情報ではラブラブラブラブ聞いていたのでどれだけちぎみゆを押し出してくるのかと思っていたからかさほどでもなくよい塩梅でした。なんなら月組『ルパン』におけるアルベールとカーラの方が相当だったよね...いや、あれはあれで大変よろしかったですごちそうさまでした。

しかしちぎたのイケっぷりたるや。男役でもない、ジャニでもない、あれは何のジャンルなんだ...ハリウッドの若手俳優的な、「SCREEN」あたりに取り上げられそうな無垢で素朴な若手俳優みたいな感じ...ってのが近いかなー。とにかく、イケだった。そう思うとほんと雪組男役の顔面偏差値が高すぎて慄きますよね...まあ『るろうに剣心』のポスタービジュアルからして万人承知のことを今さら言ってみたまでですが。

みゆちゃんは何を置いてもその圧倒的なヒロイン声。月組にいた頃よりもちょっとハスキーになったかな?でも本当にあの美しい声は最強の武器。みゆちゃんもどちらかというと内に何かを秘めた陰な役の方が上手い気がするけど、そこはちぎたとの息の合ったコンビ感もあってか、快活な大人の女性イヴォンヌもとても魅力的だった。スカステ「DREAM TIME」でまちくんも言ってたけど対ちぎたという意味では結構今のコンビ感そのままに素でいけそうなイヴォンヌだった気がします。

でもって、われらがひとこ。今回は芝居もショーもソロがなくてちょっと淋しかった。まだまだ技術的には荒いとは思うけどひとこの歌、好きなのに。お芝居は翔くん演じる刑事ホレイショーのコンビの刑事役。いっつもポケットに手を入れて翔くんの後ろをすたすた歩いてる印象ってくらいであまり印象に残る役ではなかったなー。残念。狙撃されて車いすに乗っているだいもんを案じてもうこんな仕事辞めてと食ってかかる恋人星南のぞみちゃんが最後泣き出したところに「うるさい!」だったかな、ぞんざいに言い放つ感じがとっても良かったです。わたしもひとこにぞんざいに扱われたいです。ちょっと冷たい感じの三白眼で一瞥されたいです(願望)。えっと、あの、新公、楽しみにしてますね(もじもじ)。

 

当初コミカルなストーリーになると聞いていたこともあって、『メランコリック・ジゴロ』的な作品になるのかとちょっと期待していたのだけど、なかなかどうして結局は通常運転な正塚作品でしたね...それでもなおここまで客席を埋めに来るちぎた率いる雪組はほんとすごいです。これもまさかの稼働率100%達成してしまうのでしょうか。元月担としては経験がないことなのでまったく意味がわかりません(ひとこと余計です)。